詐欺の構造と被害者支援【第2期】

SNS投資詐欺の追加投資勧誘|「予想収益40%」を信じてNFP取引に申し込んだ日【後編】

残高が増える画面を、私は嬉しく見ていた

2024年4月4日の夜。指示された取引を終えると、画面には2,150ドルの利益が表示されました。その喜びが、翌日の米国雇用統計に合わせた取引への期待につながっていきました。

私は、残高が増えるのが嬉しかった。でも当時も、その表示には少し違和感がありました。どこか本物っぽくない。でも何がおかしいのかは、説明できませんでした。

取引中の緊張、表示上の利益への喜び、残高への違和感、翌日の40%への期待を描いた後編の導入漫画

この記事は、SNS投資詐欺の被害に遭った私が保存していた、グループLINEと個人LINEの記録です。NFP取引への参加を申し込んだ日に行った夜のADA取引を振り返ります。

日常の会話から、夜の暗号資産取引へ

食事の写真や挨拶が流れるグループLINEから、個人LINEでの具体的な取引指示へ進みました。

19時37分、仕事を終えたという参加者が、餃子や料理の写真を投稿していました。今夜の暗号資産取引指導に間に合うように急いで食べる、という内容でした。

食事の写真と仕事終わりの会話に続き、夜の暗号資産取引を楽しみにする投稿が流れるグループLINE

普通の生活を感じる会話がある。そんな雰囲気も、私が参加者を「自分と同じような一般の人」と思っていた理由の一つでした。

個人LINEで指定された「10ロット」

19時57分、私には日本時間20時30分、ADAUSD、10ロットという指示が届きました。売買の方向は後から通知され、注文画面を準備して送るよう求められます。

日本時間20時30分にADAUSDを10ロットで取引するよう指定され、私が注文画面を送った個人LINE

私は画面を送り、その後に届いた成行売りの指示に従いました。自分で市場を調べて判断するより、相手に確認してもらいながら操作する流れでした。

「緊張します」から「嬉しいです」へ

取引中のマイナス表示が、終了後にはプラスに変わりました。
私の返信にも、緊張から喜びへの変化が残っています。

20時30分、画面にはマイナス800ドルが表示されていました。
翌分、私は「緊張します よろしくお願いします」と送っています。

ADAUSDの売り取引にマイナス800ドルが表示され、私の緊張する返信の後に21時00分の終了指示が届いた記録

21時00分、取引終了の指示が届きました。
終了後の記録を送った私は、21時05分にこう返信しました。

2150ドルの利益です😀
嬉しいです
とても、ありがとうございます♪

取引後に私が2,150ドルの利益を喜び、相手にお礼を送った個人LINE

残高表示が増えても、資金の実在は確認できない

取引後の残高は、表示上の利益と計算が合っています。
それでも、その一致だけではお金の実在や出金できることを確認できません。

表示残高は105,947.41ドルから108,097.41ドルへ増えました。
差額は、損益として表示された2,150ドルです。

取引後の残高、有効額、可能額がそれぞれ108,097.41ドルと表示された口座画面

私はこの数字を嬉しく見ながらも、どこか本物っぽくないと感じていました。
ただ何に違和感を感じているのか、はっきりとは分かりませんでした。
未決済の取引や必要な証拠金などがない場合は、正規の取引システムでも残高・有効証拠金・余剰証拠金が一致することがあります。[資料1]

私が確認できていなかったのは、「可能額」が何を意味するのか、
誰が資金を管理しているのか、表示を裏付ける記録は何かということでした。

画面に残高があることと、そのお金を実際に受け取れることは別です。
金融庁も、投資アプリに入金や利益があるように表示する手口を紹介しています。
最初に少額の出金ができても、安全の証明にはなりません。[資料2]

「26ロット」を日本円で考えると、違う大きさが見えた

グループの利益報告には、追加資金を用意してよかったという言葉が添えられていました。
円に置き換えると、利益だけでなく取引規模にも目を向けられます。

21時06分、参加者が5,330ドルの収益を報告しました。
投稿には「追加資金準備して良かったです!」とあり、
26ロット、入金26,364.88ドルという画面が添えられていました。

参加者が5,330ドルの収益と追加資金を準備してよかったと報告し、26ロットと入金26,364.88ドルの画面を投稿したLINE

当時は、同じグループの人の成功体験として受け止めていましたが、今読み返すと、
「お金を追加した判断は正しかった」というメッセージも含まれていたと感じます。

ドルとロットを円に置き換え、表示から推定した26ロット約1億1,300万円の取引規模と損失の可能性を説明する漫画

入金額・利益額・取引規模は、それぞれ違う

分かりやすくするため、以下は1ドル=150円で概算しています。
当日の為替レートや、実際の送金額を再現するものではありません。

画面の数字を円に置き換えた例
対象 数字の意味 円換算・概算
26ロットの参加者 表示された入金額 約395万円
同じ参加者 報告された利益 約80万円
同じ参加者 表示から推定した取引規模 約1億1,300万円相当
私の10ロット 表示から推定した取引規模 約4,347万円相当

約1億1,300万円は、その人が入金した額ではなく、私の表示価格差と損益から取引数量を逆算し、
同じ商品・同じ1ロットの数量だと仮定した場合の規模です。

推定の計算条件を見る

手数料等を除く単純な売り取引の損益を「数量×(開始価格−終了価格)」と仮定すると、
私の表示からは2,150÷(0.5796−0.5753)=50万ADA、10ロットなので1ロット=5万ADAと逆算できます。

私の規模は50万ADA×0.5796ドル=289,800ドル、150円換算で4,347万円です。
26ロットの参加者には同じ数量を仮定し、
26×5万ADA×表示開始価格0.5795ドル=753,350ドル、150円換算で約1億1,300万円としています。

同じ規模で価格が1%不利に動いた場合、26ロットでは約113万円の損失に相当します。
これは費用等を除く仮定の計算で、実際にその損失が発生したという意味ではありません。

「10ロット」と聞いて操作していた私は、どれほど大きな取引なのか分かっていませんでした。利益を喜ぶ前に、単位と損失の可能性を理解できる説明が必要だったのだと思います。

その夜の利益報告が、翌日の「40%以上」への期待につながった

取引を終えて参加者を褒めた後、相手は翌日の米国雇用統計を、さらに利益を得る機会として案内しました。

21時34分の投稿には、200%の利益目標に向けて、厳格に取引指示を実行する必要があると書かれていました。続いて、別の講師の直接指導と、翌日の予想利益は取引額の40%以上になる見込みだという案内がありました。

200%の利益目標と指示の実行を求めた後、翌日の米国雇用統計に合わせた取引で40%以上の予想利益を案内するLINE

米国の3月分の雇用統計は、実際に2024年4月5日、日本時間21時30分に発表されました。経済イベントそのものは実在します。[資料3]

しかし、実在する経済指標の名前が出てくることは、相手の予測や投資サイトを信用できる証拠にはなりません。
「取引額の40%」も、何を基準とする数字なのか、この投稿だけでは確認できませんでした。

私自身の喜び、参加者の報告、翌日の高い予想利益。
記録をつなげると、参加申込みの後にも、期待が重ねられていたことが見えてきます。

外部の市場と比較すると、表示価格に食い違いがあった

被害後に同じ時間帯の公式市場データを調べると、私の表示記録とは異なる価格が確認できました。
これは取引記録を外部で確かめる材料になります。

私の記録には、ADAUSD.invの売り10ロット、開始価格0.5796、終了価格0.5753、損益2,150ドルと表示されています。

ADAUSD.invの売り10ロットに開始価格0.5796、終了価格0.5753、損益2,150ドルと表示された取引記録

LINEの指示で指定された日本時間20時30分から21時00分を基準に、2024年4月4日の1分足データを比較しました。

2024年4月4日・日本時間での価格比較各1分足の始値0.5807 USD0.5811 USD
Binance ADAUSDT現物各1分足の始値0.5804 USDT0.5811 USDT

私の画面では価格が下がり、売り取引で利益が出た形です。
一方、外部の2市場では、この2時点の1分足の始値はわずかに上昇していました。

比較方法と、確認できていないこと

日本時間20時30分・21時00分をUTC11時30分・12時00分へ変換し、CoinbaseのADA-USDとBinanceのADAUSDTの公式1分足を参照しました。取得日は2026年10月7日(日本時間)です。データの出典と仕様は参照資料に記載しています。

1分足の始値は秒単位の約定価格ではありません。私の商品の契約仕様、価格配信元、実際の約定時刻、費用、サーバー時刻のタイムゾーンは未確認です。現物市場と画面の商品は同一と確認できておらず、USDとUSDTも別です。

この比較だけで私や参加者全員の実際の損益を確定したり、利益報告者の加担を断定したりはできません。

今の取引を、LINEの外で確かめてください

今、指示を受けて暗号資産やFXを取引している人も、相手とは別の情報源で価格を確認できます。詐欺だと確信していなくても、調べてみてください。

記録の保存、外部サイトの検索、商品と時刻の確認、価格照合、追加の入金を止めるまでを猫が案内する6コマ漫画

私のように何年も前までさかのぼる必要はありません。まずは今見ている銘柄を、グループの外で検索してみてください。全部の取引所を調べる必要はありません。

1.取引の記録を保存する

銘柄、買い・売り、取引日時、開始・終了価格が分かる画面と、LINEの指示を保存します。自分用の確認メモを作るだけなら、口座番号や個人情報まで書く必要はありません。

2.外部サイトで同じ銘柄を探す

今の価格の目安や取扱市場はCoinGecko、取引した時間帯のチャートはTradingViewで確認できます。今回のADAなら、次のページが入口になります。

ほかの銘柄はサイト内でBTC、ETHなどを検索してください。これらは価格情報を確認するための案内で、取引所の利用や送金を勧めるものではありません。価格照合に、現在使っている取引口座のログイン情報や秘密鍵を入力する必要はありません。

3.通貨ペア・商品・時刻をそろえる

ADAUSDとADAUSDTは同じではありません。現物、先物、CFDなどの商品も確認します。画面に「.inv」などの表記があり仕様が分からなければ、外部の現物価格は参考比較として扱ってください。

TradingViewのチャートでは、時刻表示やチャート設定からタイムゾーンを変更できます。東京・UTC+9に合わせて、取引した時間帯を1分足や5分足で確認します。操作位置は端末や画面によって異なります。[資料6]

4.記録の価格を、同じ時間の値動きと比べる

記録された価格が、その時間帯の高値・安値から大きく外れていないかを見ます。できれば別の取引所でも確認してください。現在の価格だけを、過去の約定価格と比べないことが大切です。

取引所ごとの価格差、売値と買値の差、商品の違いなどもあります。少し違うだけで詐欺とは限りません。反対に、価格が近くても安全の証明にはなりません。価格を見ただけでは、資金の保管や出金できることまでは確認できないためです。

過去の細かいチャートは、プランや収録範囲によって表示できないことがあります。表示されないこと自体も詐欺の証拠ではありません。分からなければ確認を保留し、追加の入金を止めて相談してください。[資料7]

追加の入金前に、LINEの外で確認するチェックリスト

相手の説明やグループの利益報告から一度離れて、自分で確認できた項目にチェックしてください。

確認できた項目をタップしてください








チェックは確認作業のメモです、安全度を採点するものではありません。すべてにチェックが付いても、安全が保証されるわけではありませんので注意してください。個人情報の入力や送信は必要ありません。このチェック欄に保存機能は付けていません。

運営会社の登録は、金融庁の金融事業者一括検索の案内から確認できます。登録された会社名が見つかっても、今使っているサイトがその会社のものかは別途確認が必要です。

記録と検証に使った資料

体験部分は2024年4月4日の保存LINEと取引画面に基づきます。外部情報は公的機関やデータ提供元の資料で確認しました。

外部情報の確認日:2026年10月7日。円換算は説明用の仮定です。個別の運用や売買を勧める記事ではありません。

価格の照合に加えて、運営会社やグループ内の誘導を確認したい方へ、関連する検証記事を紹介します。

あの小さな違和感だけでも、立ち止まってよかった

当時の私は、数字が増えることを喜び、その裏付けを外で確認できていませんでした。
今、似た画面を見ている人には、確認する時間を取ってほしいと思います。

何が変なのか説明できなくても、相手を疑い切れなくても、いったん止まっていい。そのことを、当時の私にも伝えたいです。

私は止まれませんでした。だから、あなたには止まってほしい

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