詐欺の構造と被害者支援【第2期】

SNS投資詐欺のNFP取引を検証|180万円の利益表示とXEM市場価格の食い違い

2024年4月5日。米国の雇用統計(NFP)が発表された夜、私はLINEで届いた指示に従い、暗号資産XEMの売り取引を行いました。

取引画面に表示された利益は、11,880ドル。日本円で約180万円という金額でした。

私は震えるほど喜びました。LINEの相手からも祝福され、翌日の取引計画まで案内されました。

しかし、後になって外部の取引所の価格を確認すると、私が見ていた取引画面とは大きく異なる数字が残されていたのです。

米国雇用統計の夜に高額な利益が表示され、喜んでいた当時の状況を描いた漫画
注意喚起漫画:画面に表示された利益を信じていた夜。

この記事で検証すること

今回は、保存していたLINEのスクリーンショットと取引画面をもとに、2024年4月5日の出来事を時系列で振り返ります。

  • 350万円を投資したと話していた藤田氏の立場が変わったこと
  • LINEグループで紹介された「社長夫人」についての疑問
  • 21時30分の売り注文と21時55分の決済指示
  • 11,880ドルの利益表示と、実際の市場価格の食い違い
  • LINEの外で価格を確認する重要性

この記事は、私が実際に受け取ったメッセージや保存資料を検証する記録です。登場人物の役割や意図について、確認できないことを事実として断定するものではありません。

米国雇用統計(NFP)とは?

NFPは、米国の非農業部門雇用者数の増減を示す経済指標です。毎月の雇用統計では、失業率や平均時給なども発表され、為替や株式市場に影響を与えることがあります。

2024年4月5日の発表は、日本時間21時30分でした。

ただし、重要な経済指標が発表されることと、特定の投資で確実に利益が得られることは、まったく別の話です。

米国雇用統計NFPと相場変動の関係を初心者向けに説明する漫画
解説漫画:NFPとは何か。重要な発表でも利益は保証されません。

350万円を投資した藤田氏が、INVDOMのスタッフとして登場

LINEグループには、350万円を投資したと説明していた藤田氏がいました。

ところが、後に届いた案内では、同じ人物がINVDOM側のスタッフとして登場しました。

私が疑問に思ったのは、投資参加者として紹介されていた人物と、取引サービス側のスタッフという立場が、どのような関係にあるのかという点です。

藤田氏が350万円の投資について説明していたLINE記録
資料1:350万円の投資に関するLINEの記録。
INVDOMのスタッフとして案内された人物に関するLINE記録
資料2:INVDOMスタッフとしての案内。

この記録だけで本人の意図や役割を断定することはできません。しかし、投資を勧めるグループでは、参加者や運営関係者の立場が明確かどうかを確認する必要があります。

投資参加者とスタッフという異なる立場について考える注意喚起漫画
注意喚起漫画:参加者と運営関係者の立場を確認する大切さ。

手作りサングリアの投稿者が「社長夫人」と紹介された

同じLINEグループには、手作りのサングリアについて投稿する参加者もいました。

その人物について、別の参加者がワイン輸入会社の社長夫人という趣旨の紹介をしていました。

日常的な会話は、グループに親しみや安心感を生むことがあります。

ただし、LINE上の自己紹介や第三者からの紹介だけで、その人物の身元や経歴が確認されたことにはなりません。

手作りサングリアの投稿と社長夫人という紹介に関するLINEの記録
資料3:LINEグループ内の人物紹介に関する記録。
LINE内の人物紹介や立場について感じた疑問を描いた注意喚起漫画
注意喚起漫画:LINE内の人物紹介に感じた疑問。

21時30分、XEMの売り注文を指示された

米国雇用統計の発表時刻に合わせて、個人LINEにXEMUSDの成行売り(SELL)を指示するメッセージが届きました。

取引後には、スクリーンショットを送るよう求められました。

4月5日21時30分のXEMUSD成行売り指示と画面送信依頼
資料4:21時30分の売り注文の指示。

私はXEMUSD.invを21.6ロット売りました。

21時31分に送信した画面には、売値0.04362ドル、表示価格0.04379ドル、含み損1,836ドルが記録されていました。

つまり、取引開始直後は利益ではなくマイナスだったのです。

XEMUSD.inv売り21.6ロット、売値0.04362、含み損1836ドルの取引画面
資料5:21時31分、取引開始直後の含み損。

21時55分、決済の指示で11,880ドルの利益が表示された

約25分後、個人LINEに取引を終了するよう指示が届きました。

私は決済し、21時56分に取引結果を送信しました。

4月5日21時55分の取引終了指示に関するLINE記録
資料6:21時55分、取引終了の指示。

保存した取引履歴に表示されていた内容は、次のとおりです。

INVDOMの取引履歴に表示された数字

銘柄:XEMUSD.inv
取引:SELL 21.6ロット
売値:0.04362ドル
決済価格:0.04252ドル
表示利益:11,880ドル
アプリ内の決済時刻:2024年4月5日15時55分49秒

参考レートを1ドル151.61円とすると、11,880ドルは約180万1,127円です。

ただし、これは取引アプリ内で表示された利益であり、実際に出金できた金額を示すものではありません。

アプリ内の決済時刻15時55分49秒と、LINEで結果を送信した日本時間21時56分には約6時間の差があります。夏時間を採用する地域のサーバー時刻などが考えられますが、INVDOMが実際に使用していた時間帯は確認できていません。

11,880ドルの利益に、私は舞い上がっていた

私は21時59分、喜びと感謝をLINEで伝えました。

すると22時00分、相手から祝福のメッセージが届き、利益が45%に達したという説明とともに、翌日の取引計画について案内されました。

そのときのやり取りが、次の画像です。

2024年4月5日21時59分から22時01分のLINE。11880ドルの利益を喜ぶ返信と翌日の取引計画の案内。個人名は黒塗り加工済み
資料7:11,880ドルの利益表示を喜んでいた当時のLINE。個人名を匿名化した画像を使用。

このとき私は、翌日も取引が続くことに疑問を持ちませんでした。

しかし今振り返ると、画面上の高額利益を見せられた直後に、さらに次の取引へと気持ちが向かっていたことが分かります。

同じ日のLINEでは、ほかの参加者も高額利益を報告していた

グループLINEには、16,830ドル、13,770ドル、28,600ドルなどの利益報告が並んでいました。

LINEグループ内に投稿された高額利益の報告
資料8:LINE参加者による利益報告。表示利益と出金実績は別です。

また、別の参加者が投稿した取引履歴には、売値0.04354ドル、決済価格0.04252ドル、表示利益6,630ドル、決済時刻15時55分41秒と読み取れる記録がありました。

私の履歴に表示された15時55分49秒とは8秒差で、決済価格も同じでした。

別参加者が投稿したXEMUSD.invの取引履歴。表示利益6630ドル、決済価格0.04252ドル
資料9:別参加者の取引履歴に表示された数字。

これらの投稿だけで、参加者が運営側の協力者だったと断定することはできません。

ただし、グループ内で高額利益の報告が続くと、ほかの参加者が安心したり、投資への期待を高めたりする可能性があります。

Binanceの1分足と照合すると、価格の方向が違っていた

被害後、私はBinanceが公開する2024年4月5日のXEM/USDTの1分足データを確認しました。

日本時間21時31分の終値は0.04446 USDT、21時55分の終値は0.04512 USDTでした。

つまり、Binanceの1分足終値では、この間に価格が上昇していたのです。

一方、INVDOMの画面では、0.04362ドルから0.04252ドルへ下落した売り取引として利益が表示されていました。

比較項目 表示価格
Binance 21:31 終値 0.04446 USDT
Binance 21:55 終値 0.04512 USDT
Binance 当日安値 0.04390 USDT
INVDOM 売値 0.04362 USD
INVDOM 決済価格 0.04252 USD

INVDOMの決済価格0.04252ドルは、Binanceの当日安値0.04390 USDTよりも低い数字です。

また、同じ21時55分のBinance終値0.04512 USDTと比較すると、価格差は0.00260で、Binance側の価格を基準に約5.76%の差があります。

2024年4月5日のXEM価格についてBinanceの実市場データとINVDOMの表示価格を比較した図
比較図:Binanceの市場価格とINVDOMに表示された取引価格。

比較するときの重要な注意点

BinanceのXEM/USDT現物市場と、INVDOMのXEMUSD.invは同一の商品であると確認できていません。取引条件や価格形成の仕組みが異なる可能性があります。この価格差だけで、不正操作が行われたと断定することはできません。

同じ数量を仮定すると、損益はどう変わる?

INVDOMの表示利益11,880ドルと、売値・決済価格の差0.00110ドルから逆算すると、取引数量は約1,080万XEM相当になります。

この数量を仮にBinanceの21時31分と21時55分の終値に当てはめて、売り取引として単純計算すると、次のようになります。

仮定に基づく比較計算

(0.04446 − 0.04512)× 10,800,000
= −7,128 USDT相当

1ドル151.61円という参考レートで換算すると、約108万円のマイナスに相当します。

これは実際にBinanceで行った取引の損益ではありません。数量や取引時刻を仮定した比較であり、手数料、スプレッド、約定価格なども考慮していません。

それでも、私が見ていた利益表示と外部市場の価格の動きが大きく異なっていたことは、確認しておくべき重要な点でした。

11880ドルの利益表示と外部市場の価格を比較する注意喚起漫画
注意喚起漫画:画面の利益と外部市場の価格を比べる。

送金する前に確認したい10項目

私のように、LINEの指示と取引アプリの表示だけを信じてしまわないために、確認してほしいことをまとめました。










ひとつでも確認できないことがあるなら、急いで送金や取引を進めず、第三者や公的な相談窓口に確認することをおすすめします。

今回の検証に使った資料と限界

一次資料は、私が保存した2024年4月5日のLINE会話とINVDOMの取引画面です。外部市場との比較には、Binanceが公開するXEM/USDTの1分足データを使用しました。

Poloniexでは同時間帯のデータが取得できましたが、確認した範囲では出来高が0で、活発な売買を裏付ける資料にはなりませんでした。Gate.ioは過去データの取得制限、KuCoinは確認時点のAPIで取引ペアが非対応でした。

データが取得できないことと、取引が存在しなかったことは別です。

漫画は理解を助けるための再構成です。LINEの人物関係、役割の意図、取引の実在性について、確認できていないことを事実として断定しません。

参考資料:

関連記事|LINEの外で確かめるために

今回の取引につながる出来事や、投資サイトの安全性を確認する方法についても記事にまとめています。

まとめ|利益の数字より先に、確かめてほしいこと

私は、11,880ドルという利益表示を信じました。

LINEグループの報告や、投資に詳しそうな参加者の言葉にも安心していました。

でも後から外部市場の記録を調べると、価格には大きな食い違いがありました。

藤田氏の立場や「社長夫人」という紹介についても、説明のつかない疑問が残っています。

もし今、LINEで高額利益を示され、追加の暗号資産投資やFX取引、送金を勧められているなら、いったん操作を止めてください。

画面の数字が増えても、それが実際に出金できる利益とは限りません。

私は止まれませんでした。
だから、あなたには止まってほしい。

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English Summary

On April 5, 2024, I followed LINE instructions to trade XEM during the U.S. employment report release.
My trading app displayed a profit of USD 11,880, but this was not proof of withdrawable funds.
Later, I compared the displayed prices with Binance historical market data and found significant differences.
The comparison does not by itself prove manipulation because the instruments may differ.
Always verify trading platforms, market prices, and withdrawal conditions independently before sending money.

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記録から確認できる事実と、筆者の考察や推測を区別するよう努めています。記事は特定の投資商品への勧誘や、法律・金融上の個別助言を目的とするものではありません。

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