暗号資産の利益を出金しようとしたとき、「税金を払わなければ出金できません」と言われたら、本当に支払う必要があるのでしょうか。
私はSNS投資詐欺の被害に遭っていた当時、海外取引所のカスタマーマネージャーを名乗る人物から、暗号資産の税金について説明を受けました。
そこには「20.315%」「確定申告」「3,000万円で免税」など、本物の税制を思わせる言葉や数字が並んでいました。
そして翌朝には、「現在の入金額は1,300万円。免税申請にはあと1,700万円必要です」と伝えられました。
今回は、当時実際に交わしたLINEを公開しながら、国税庁・金融庁・国民生活センターなどの公的情報と一つずつ照合します。
今「税金を払えば出金できる」と言われている方へ
現在進行形で、SNS投資、FX、暗号資産の取引サイトなどから「税金」「保証金」「手数料」「口座解除料」などの名目で追加送金を求められている場合は、まず送金を止めてください。
「税金を払えば出金できる」「あと○万円入金すれば口座を解除できる」と言われても、その説明だけを信じて追加送金しないでください。
振込による被害の場合、全国銀行協会は振込先口座のある金融機関へ連絡するとともに、警察へ届け出るよう案内しています。
消費者ホットライン「188」は、最寄りの消費生活センターなどにつながる全国共通番号です。
漫画で見る「納税しないと出金できない」という誘導
今回の被害では、最初から「1,700万円を振り込んでください」と要求されたわけではありません。
税率や税務用語を説明し、もっともらしい制度を示したあとで、追加資金が必要だという話へ進んでいきました。

私が「免税措置」に興味を持ったところから始まった
当時の私は、暗号資産取引を始めてから確定申告や税金のことも意識するようになっていました。
利益が出たら税金を払わなければならない。
ただし、暗号資産の税制について詳しい知識があったわけではありません。
そこで私は、取引所のカスタマーマネージャーを名乗る藤田卓也さんに、
「利益は多くないですが、免税処置に興味があります」
「定員があるとの事、定員に募集します」
と伝えました。
私は税金から逃れようとしていたわけではありません。
確定申告を意識していたからこそ、合法的に税負担を抑えられる制度があるなら知りたいと思っていました。
「暗号資産の税率は20.315%」と説明された
藤田さんから届いた説明では、暗号資産から得られた利益について「先物取引等に関するその他の所得」として課税され、税率は合計20.315%になるという趣旨の内容が書かれていました。

さらに、
「取引口座から利益を得た場合、資金を引き出す際に税金を支払う必要があります」
とも説明されています。
所得税15%。住民税5%。復興特別所得税0.315%。
ここまで具体的な数字を示されると、当時の私は「ちゃんと税金について説明してくれている」と感じてしまいました。
検証1|20.315%という数字そのものは実在する
ここが、この説明を見抜きにくくしていた重要なポイントです。
20.315%という数字そのものは、完全な架空の数字ではありません。
国税庁は、一定の先物取引に係る雑所得等について、所得税15%と地方税5%による申告分離課税となり、復興特別所得税も併せて申告・納付すると説明しています。
つまり、「20.315%という税率が実在する」ことと、「一般的な暗号資産取引の利益が一律20.315%になる」ことは別の話です。
検証2|一般的な暗号資産の利益は原則「その他の雑所得」
国税庁は、ビットコインなどの暗号資産を売却または使用することによって生じる利益について、事業所得等に付随して生じる場合を除き、原則として「その他の雑所得」に該当すると案内しています。
通常の雑所得は、給与所得など他の所得と合計して総所得金額を求め、そのうえで税額を計算します。
少なくとも、一般的な個人の暗号資産取引について「暗号資産の利益=一律20.315%」と説明することはできません。
なお税制は改正される可能性があります。実際に確定申告をする際は、その年の国税庁の最新情報や税務署、税理士などへ確認してください。
検証3|「先物取引」と「暗号資産」が混ざった説明だった
私が受け取ったLINEでは、
「暗号資産から得られた利益は『先物取引等に関するその他の所得』」
という趣旨の説明がされています。
しかし国税庁では、一般的な暗号資産取引による所得と、一定の先物取引に適用される申告分離課税について、それぞれ別に説明しています。
今になって見返すと、実在する税率や税務用語が組み合わされることで、専門的で正確な説明のように見えていたのだと感じます。
税金に詳しくなかった当時の私には、その違いを判断できませんでした。
「3,000万円になれば非課税」という説明が出てきた
さらに藤田さんから、
「海外取引所のため、3000万円以上の預金資金は暗号資産での出金が可能」
という趣旨の説明がありました。
私は何度読んでも理解しきれず、
「海外取引所から3000万円以上の貯金資金を暗号資産で出金すれば免税されるのでしょうか?」
と聞き直しています。

返ってきた回答は、
「弊社取引所の非課税枠は、預金額が3000万円に達したユーザーを対象としています」
というものでした。
ここで注目したいのが、「弊社取引所の非課税枠」という表現です。
当時の私は、「海外取引所独自の制度なのかもしれない」と受け止めてしまいました。
検証4|「3,000万円入金すれば免税」という制度は国税庁の説明と一致しない
国税庁は、暗号資産を売却した場合、暗号資産で商品やサービスを購入した場合、暗号資産同士を交換した場合などについて、所得計算の方法を詳しく公開しています。
しかし、取引所への預金・入金額が3,000万円になれば暗号資産の利益が非課税になるという一般的な制度は、国税庁が公開している暗号資産の税務情報では確認できません。
少なくとも、私がLINEで説明された「3,000万円まで入金すれば免税申請ができる」という話とは一致しません。
翌朝「あと1,700万円必要です」と言われた
そして翌朝、藤田さんから新しいLINEが届きました。

現在の入金額は1,300万円。
免税申請には、あと1,700万円。
計算すると、
1,300万円 + 1,700万円 = 3,000万円
前日に説明された「3,000万円の非課税枠」にぴったり到達します。
ここで「免税制度」の話が、具体的な1,700万円の追加資金要求へ変わりました。
もし最初から「1,700万円ください」と言われていたら
私は、この順番がとても重要だったと思っています。
最初から「あと1,700万円振り込んでください」と言われていたら、もっと強く警戒できたかもしれません。
20.315%という具体的な税率を説明される
↓
税金を少しでも抑えたいという私の希望を聞いてもらう
↓
3,000万円という「非課税枠」を説明される
↓
元本と利益について具体例で説明される
↓
「あなたの場合はあと1,700万円」と言われる
こうして段階を踏むことで、1,700万円の追加資金が、
「さらに投資してください」ではなく、「税金を抑えるために必要な手続き」
のように見えてしまいました。
私は「制度がおかしい」と気づいて断ったわけではなかった
私は藤田さんに、
「免税申請はしたいのですが、現段階での資産追加1700万円は不可能です」
と返信しました。

今、この文章を読み返すと怖くなります。
私は、
「そんな免税制度はおかしい」
とは言っていません。
「免税申請はしたい」
と言っています。
つまり、この時点でも私は「3,000万円になれば免税申請できる」という前提そのものを信じていたのです。
追加送金をしなかった理由は、詐欺に気づいたからではありません。
1,700万円を用意できなかったから。
それだけでした。
金融庁も「出金時の税金要求」に注意喚起している
これは私だけが経験した特殊な出来事ではありません。
金融庁は、FX取引や暗号資産投資について、投資したお金が引き出せなくなり、出金の際に税金などの名目で高額な金銭を要求されるトラブルについて注意を呼びかけています。
金融庁の相談事例でも、SNSなどで知り合った人物から投資を勧められ、出金しようとすると保証金や税金等の名目で金銭を要求される被害について注意喚起されています。
出金するために「税金」「保証金」などの追加送金を要求された場合は、そのまま支払わず、公的機関へ確認してください。
国民生活センターも「税金や手数料を払っても出金できない」事例を公表
国民生活センターにも、暗号資産投資サイトで利益が出たように表示されたあと、出金のために税金や手数料などを要求された相談が寄せられています。
支払っても結局出金できないケースがあるとして、安易に追加送金しないよう注意が呼びかけられています。
国民生活センター|暗号資産の投資サイトに手数料を支払ったが出金できない
SNSをきっかけに暗号資産投資へ誘導され、出金時に高額な費用を要求されるトラブルについても公表されています。
暗号資産の税金と正しい納税の基本
暗号資産で利益が出た場合、税金が発生することがあります。
しかし、確定申告によって税額を申告・納付することと、「出金させるため」と称して投資サイトへお金を送ることは分けて考える必要があります。


暗号資産の納税チェックリスト
税金の話は難しく感じますが、一つずつ確認すれば整理できます。実際の税額や申告義務は個人の状況によって異なるため、最終的には国税庁・税務署・税理士などへ確認してください。
課税対象になり得る取引を確認
利益計算に必要な資料を確認
確定申告・納税を確認
「出金のための税金」と言われたら詐欺を疑う
正しい納税と「出金するための税金」は分けて考える
暗号資産で利益が出れば、税金が発生する場合があります。
正しく申告し、必要な税金を納付することは大切です。
しかし、
「取引サイトから出金するために、先にそのサイトへ税金を送る」
という話とは別です。
分からないことがあれば、取引所の担当者だけに確認するのではなく、国税庁・税務署・税理士など、その取引によって利益を得る立場ではない第三者へ確認してください。
本物の数字が入っているからこそ見抜きにくい
過去のLINEを国税庁の情報と照らし合わせて、改めて怖いと感じたことがあります。
詐欺の説明は、すべてが明らかな嘘とは限りません。
・20.315%
・所得税
・住民税
・復興特別所得税
・雑所得
・確定申告
・元本と利益
こうした本当に存在する数字や税務用語が使われています。
そこへ、
・「3,000万円になれば免税」
・「あと1,700万円入金すれば申請できる」
・「税金を払わなければ出金できない」
という話が混ざってくる。
税金に詳しくない人ほど、
「専門的な話だから、自分が知らないだけなのかもしれない」
と思ってしまう可能性があります。
私もそうでした。
税金・保証金・解除料を要求されたら送金前に確認してください
SNS投資、FX、暗号資産の取引画面に大きな利益が表示されていても、その数字だけで本当に資産が存在すると判断することはできません。
そして出金を申し込んだ途端に、
・税金
・保証金
・手数料
・口座解除料
・違約金
など、別の名目で次々に送金を要求されたら、一度止まってください。
「ここまで払ったのだから、あと少し払えば取り戻せる」
という心理を利用される可能性があります。
相手が示した制度名や税率だけを信じるのではなく、国税庁・金融庁・警察・国民生活センターなど、その制度を所管する公的機関の情報で確認してください。
公的機関の確認先
今回の記事で参照した公的機関です。投資サイトやSNSの相手から税金・手数料・保証金などを要求されている場合は、相手の説明だけで判断せず確認してください。
- 国税庁|暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)
- 国税庁|暗号資産の取引に係る収入がある場合
- 金融庁|FX取引・暗号資産投資の勧誘にご注意!!
- 金融庁|暗号資産に関する相談事例・アドバイス
- 国民生活センター|暗号資産の投資サイトから出金できないトラブル
- 消費者庁|消費者ホットライン188
- 全国銀行協会|金融犯罪に遭った場合の相談・連絡先
この記録を公開する理由
私は当時、詐欺に遭っている人間ではなく、暗号資産で投資をしている人間だと思っていました。
だから税金のことも真面目に考えていました。
その気持ちまで、追加送金につながる材料になりました。
この記事を読んでいる方が、私とまったく同じ説明を受けるとは限りません。
金額も、税率も、制度名も変わるかもしれません。
でも、
「お金を引き出すためには、先に追加のお金が必要です」
という構造が出てきたら、どうか立ち止まってください。
一人で判断する必要はありません。
銀行、警察、消費生活センター、金融庁、税務署など、取引相手とは無関係の場所へ確認してください。
私は止まれませんでした。だから、あなたには止まってほしい
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English Summary
This article examines a real crypto-investment scam in which tax terminology and a supposed ¥30 million tax exemption were used to demand additional money. Japanese public agencies warn consumers to be extremely cautious when taxes, guarantees or fees are demanded as a condition for withdrawal.
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この記事を最後まで読んでくださったあなたへ。
今、言葉にできないほど苦しい気持ちを抱えているかもしれません。
張り詰めた心を少しだけ緩めるために、
「心を整える場所」
を作りました。
誰にも言えない胸の内を抱えたままでも大丈夫です。
ここで、ほんの少しだけ心を休めていってください。































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